第2日目 7月9日(水)
 6時50分起床。朝食を済ませると、そのままホテルの周辺の散歩にでかける。
 ホテルは旧市街地区のすぐそばにあるので、少し歩くだけで観光ポイントにぶつかる。リュブリャーナの街は本当にきれいで、落書きだとか破れかけたポスターなど一切ないし、ゴミひとつおちていない。また、ウィーンと同様にアール・ヌーヴォー様式の館が多い街とのことで、写真を撮りたくなるような建物がたくさんある。
 ふと見上げれば、雲ひとつない快晴で、日に焼けそうな予感・・・。部屋に戻って、日焼け止めを塗り直した。

 9時から市内観光開始。まずはリュブリャーナ市の紋章「ドラゴン」の像があるドラゴン橋を通る。現地ガイドのドラガン氏によると、現地の人は、この橋のことを「姑の橋」と呼ぶのだとか・・・。嫁と姑は仲が悪いから、とドラガン氏。つまり「姑=ドラゴン」ってことですか。火噴きそうで怖いなあ(汗)

 次はリュブリャーナ城へ。リュブリャーナ城は小高い丘の上に建っており、塔の上からはリュブリャーナのパノラマが楽しめる。オレンジ色の瓦屋根の連なりは、確かに日本とは全く違う風景なのだが、遠くに山が見えるようなところは、ちょっと日本的な雰囲気がないでもない。例えばロンドンやニューヨーク等の都市でパノラマ風景を見ても、山は見当たらないので・・・。

 城からバスに戻ると、スルーガイドのトム氏(クロアチア人)と、ドラガン氏(スロベニア人)がクロアチア語とスロベニア語で話している。なんでも、両国語の違いは、方言の違いくらいの感覚なのだそうで、十分通じるのだとか。
リュブリャーナの朝市
色とりどりの果物や野菜の並ぶ朝市

 その後は、「聖ウルシュラ教会」、サマー・フェスティバルの会場になっている「ドイツ騎士団の館」(6世紀)や、最近流行っているという「骸骨バー」、「市庁舎」、「聖ニコラス大聖堂」、「三本橋」、「聖フランシスコ教会」等々を見学し、その後は40分ほどフリータイム。
 私は写真を撮りつつ、朝市をフラフラと見物し、海に見立てたキャンドルをひとつ購入した。

 12時に市庁舎の横にあるレストランで昼食。食事が用意されるまでの時間を使って、ツアー客が自己紹介をしたのだが、人の顔と名前を覚えるのが苦手な私は、言われたそばから忘れていくのであった・・・。
 今回のツアーの参加者は、15名+添乗員1名の合計16名。このうち、女性の1人参加者が6名もいたことに驚いた。でもまあ、案の定、私が最年少参加者である。

 午後からは、田舎道を通りつつ、中世の面影が残るスコフィア・ロカという町へ。もともとの旅程には入っていなかったのだが、トム氏の提案で寄り道することになったのである。
 空には雲が広がり、雨がパラついたが、歩いているうちに晴れてきた。同じく1人参加のIさんが「私は晴れ女だから」と自信満々に言うと、別のツアー客も「私もそうよ。肝心な時には絶対に晴れるの」と何とも力強い(?)ことを言ってくれる。

 トム氏の案内で小さな町を散策した後、少しフリータイムをもらった。急ぎ足でトイレに向かう人、お茶を飲む人、写真を撮る人、買物する人・・・とバラバラツアー客が散った。私は手近なパン屋でミネラル・ウォーターを購入したあと、路地裏などをふらふら歩いた。車の通る道はアスファルト舗装されているのだが、それが剥げたところから石畳が見える。きっと、もともと石畳だったところを舗装したのだろうが、建物だけではなくて足元の見えないところにも中世が眠っているんだな、としみじみ感じた。

 スコフィア・ロカに別れを告げ、今日明日の宿泊地であるブレッド湖へ向かう。車窓の風景はといえば、遠くには山がそびえ、とうもろこし畑が続いて、時々、オレンジ色の瓦屋根の小さな集落が見える・・・そんな懐かしいような酪農国の風景である。

 16時すぎにブレッド湖畔のホテル「ヴィラ・ブレッド」に到着する。このホテルは、もともとはユーゴスラヴィア大統領チトーの別荘だったもので、昭和天皇も宿泊されたことがあるというスロベニアで最も格式のあるホテルである。ツアー客はあまり受け入れないのだそうで、添乗員の鈴木さんも初めて泊まるのだと言っていた。

 チェックイン時に、部屋割りのくじ引きをした。なんでも、「湖に面した小さい部屋」と、「湖が見えない部屋」、「湖が見えないが大きめの部屋」と何パターンかあるそうなのだ。ルーム・キー自体をくじ代わりにして、各々が好きなキーを選んだ。
 せっかく湖に面したホテルなので、湖が見えるといいな・・・と思っていたが、残念ながら中庭の菜園が見える場所だった。が。ドアを開けて驚いた! 部屋がでかい!
 まず、大きなソファーセットやテレビのある大きな居間があった。居間の向こうに大きなベッドを置いてもまだまだスペースが余る寝室があり、その向こうにバス・トイレのこれまた広い空間が・・・。
「ひとりじゃ使い切れない・・・」庶民の私は、居間をすっとばしベッドの周辺ですべて用事が済むように荷物を固めたのだった。
ヴィラ・ブレッド203号室の居間
居間だけでこの広さ・・・

 外はまだまだ明るいので、鈴木さんの提案で、希望者は町の中心まで散策することになった。ユリアン・アルプスの麓の避暑地ということで、涼しい風が気持ちいい。湖に沿ってのんびり歩きながらホテルや商店の固まる中心部まで歩き、スーパーなどをのぞいた。少し休憩しましょう、と湖脇のカフェでお茶を飲むことにした。

 私はここでアイスコーヒーを頼んだのだが・・・とんでもないものが出てきた。グラスにホットコーヒーが注がれ、さらにその上にバニラアイスが乗っているのだ! アイスはあっという間にどろどろ溶けて、コーヒーはそのアイスで生ぬるくなり、奇妙に甘い。ひとつひとつは何の変哲もない食べ物飲み物なのだが、組み合わせによっては絶句するような物体になるのだと、ある意味感動した。聞くところによると、どうもスロベニア(そしてクロアチアも)冷たいコーヒーという飲み物は存在しないらしい。
 一方、アイスティーというと冷たいことは冷たいのだが、冷たいピーチ・ティー(リプトンのピーチ・ティって一時期売ってましたよね。缶とかペットボトルで。まさにあの味)を指すようで、有無を言わせず甘いのだ。
ブレッド湖半のレースフラワー
湖畔にはレースフラワーの群生が

 こんな異文化体験的ティータイムを過ごした後、ホテルに戻ることになったのだが、お年を召したおばさま方が「疲れた」と言うので、「あっちでタクシーも拾えますよ」などと説明しているところに、白い汽車ぽっぽが止まっているのに気づいた。湖を一周する遊覧用の乗り物である。
「あれ、あれに乗りたいわ!」とオバちゃんがダダをこねるので、鈴木さんが汽車ぽっぽの運転手さんに交渉すると、本来は一周いくら、なのだが、2人で1人分の料金を払えば(つまり1人あたり正規料金の半額)ホテル前でおろしてくれることになった。ちょっと割高ではあるが、汽車ぽっぽなんて観光地じゃないと乗れないので、みんな乗って帰ることになった。
 それにしても、世間では添乗員というのはこうやって「使う」ものかと、しみじみ感動(?)した。というか、単に客のわがままなんだけれど。客というものはなるべく添乗員に迷惑をかけないようにするんじゃなくて、むしろ添乗員をお手伝いさんのように使うんだなあ・・・と。

 ホテルに戻ったところで、いきなり客室見学ツアーになってしまった。皆、部屋タイプが違うので、他人の部屋がどんなものなのか興味津々だったのだ。湖側の部屋は、たしかに狭く、下手すると私の部屋の居間より狭い。バスタブもないそうだ。それでもその人は、旅行前から湖側であることにこだわっていたということで、満足げだった。

 夕食はテラスで7時半から。盛り付けもきれいだし、日暮れ時のテラス席での食事なんてなんとも優雅。気持ちよーくおいしい食事をいただいていたのだが、メインのあたりで雷雨が。雨が降りこんでくるので、テーブルを移動したりと大騒ぎになってしまった。結局、デザートは室内でいただいたのだが、食後の紅茶はお湯がそそがれたカップ&ソーサーにティーバッグが添えられていた。どんな高級ホテルでもティーバックなんだ、と今日は飲み物に関していろいろとカルチャー・ショックな1日だった。
 部屋に戻り、洗濯をしたり、エア・メイルなどを書いたりしたのち、12時半に就寝。



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