第3日目 7月10日(木)
 昨晩の雷雨があまりにも激しかったので、お天気が心配だったが、朝6時ごろカーテンをひくと青空が広がっていた。思わず、晴れ女だというIさんの顔を思い出して「Iさん、ありがとう!」と感謝してしまった。
 朝日の射しこむベッドで二度寝をして、8時前に朝食へ。室内に美しくセッティングされたパンやサラダなどを悩みながら皿に盛って、テラス席へ運んだ。雨でしっとり濡れた緑が朝日にあたって、いっそう色鮮やか。とてもさわやかな朝である。

 朝食後、庭園から湖へ続く階段を下りて湖岸の遊歩道を少し歩いた。ひんやりとした空気が気持ちいい。
 9時にホテルを出発し、まずはブレッド湖に浮かぶ小島「ブレッド島」へ。環境保護のため、この島へはプレトナと呼ばれる手漕ぎボートでしか渡ることができない。私たちの一行総勢16名を運んでくれたのは、61歳のロド氏。ゆっくりゆっくりとプレトナはブレッド湖へと近づいていった。
 
 ブレッド島には聖マリア教会がある。この鐘楼の鐘のひもが教会内に垂れ下がっているのだが、この鐘を鳴らすことができれば願い事がかなうと言われているのだそうだ。
白鳥の親子(ブレッド湖畔)
 まだ朝早いこともあり、他の観光客がいなかったので、ツアー客が皆、順々にひもを引っ張った。どうもコツがいるようで、鳴らせる人と鳴らせない人が出た。
  私の番がきたので、「鳴りますように!」と引っ張ったら、見事鳴ったのだが……肝心の願い事をするのを忘れた、というか「鐘が鳴りますように」というのが願い事になっていたような……
葡萄(ブレッド島)  往路は元気だったラド氏も、帰路はさすがに息がきれている。高台から見下ろすと、氷成湖のブレッド湖は深い緑色をしているが、水面に近づくと湖底まで見えそうなほど澄んでいた。

 次はバスでブレッド湖の断崖(湖面から約100m)の上にたたずむブレッド城へと向かった。
 この城が建てられたのは1004年とのことで、つまり築1,000年の歴史を持つ城なのである。現在は展望台と博物館になっている。
 展望台からの眺めを堪能した後、昼食のレストランへと向かった。「オカリナ」というこのレストランは、アジアンテイストな置物などが置かれているのに、BGMはアイリッシュで、なんとも不思議な雰囲気。そして、今までにも日本人観光客を受け入れたことがあるのか、テーブルにはキッコーマンの醤油が……。そして、料理を運んでくるたびに、キュートな笑顔を浮かべながら「タクサンメシアガレ」と言い添えるのがとても可愛らしかった。
 昼食後は、ボヒニ湖のあるトリグラフ国立公園へ。スロベニアはフィンランド、スウェーデンに次いで緑の多い国なのだそうで、のどかな農村風景が続く。

 ボヒニ湖はブレッド湖よりも大きな湖で、より自然に近い感じだった。湖畔の聖ヨハネ教会などを見学したのち、標高1,537mのボーゲル山に登るケーブル乗場へと向かった。このケーブルカーは、今まで乗ったロープーウェイだとかケーブルカーのどれよりも垂直に近かったような気がする。
色とりどりのゼラニウム(ブレッド城)
 山の上にはスキー場があり、もちろん夏の今はシーズンオフのため、空のリフトが風に揺れていた。この季節はハイキングなどで楽しむ場所らしい。山の上はかなり肌寒く、霧がかかり、スロベニア最高峰のトリグラフ山は見ることができなかった。
 ごつごつした地面のあちらこちらにきれいな山野草が花を咲かせており、花好きだという60代の女性が「あら、この青い花はきれいねえ」「こっちのはシクラメンの原種よ」と楽しそうに見ているのが印象的だった。
ほたるかずらのような高山植物。青い花の色がとてもきれい。  17時ごろホテルに戻ったのだが、正面玄関前に白バイが数台停まっており、その傍には警官も立っていた。なんだろう?と思いながら彼らの脇を通り過ぎようとした時、玄関脇に黒塗りの車(おまけに小さな国旗つき)がでーんと控えているのに気づいた。
 多分、スロベニアの要人が、このホテルで会食か会議でもしているのだろう。ここはそれだけ格式のあるホテルだということだ。
 部屋に戻って、昨日スーパーで購入した「ブルーベリー・ネクター」を飲んでちょっと休憩。スーパーにはブルーベリー製品がたくさんあったので、ベリー好きの私はこのネクターとティーバックを買っていたのだ。ブルーベリー・ネクターは、要はブルーベリー100%のジュースで、甘さ控えめなすっぱいジュースですっかり気に入ってしまった。(ちなみに、ブルーベリー・ティーは酸味のあるお茶で、色がとてもきれいです)

 雲が切れて、レースのカーテン越しに日が差し込んでくるのが気持ちいい。ブレッド島の教会の鐘がここまで響いている。居心地のいいホテルの部屋で過ごす、ちょっとした時間。余裕のある行程でないとこういう時間はなかなか取れないが、こんなゆったりと時間がとても幸せに感じる。

 夕食は19時からダイニングルームで。すっかり天気もよくなったので、こんな日こそテラスで食べたかったわね、とツアーの人たちと話しながらおいしい食事をいただいた。21時半ごろ部屋に戻り、荷詰めとお風呂を済ませ、12時前に就寝した。



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