第1日目  11月29日(土)


 さて、出発だ
 出発の何日も前から、季節外れの大型台風がのろのろと南の海を進んでいた。
 幸い進路は旅行先の宮古島からそれたが、それでも台風の影響は否めないだろうなあ・・・と毎日天気予報をチェックしていた。
 出発当日の朝は、東京も大雨。そして結構肌寒い。さて、何を着ていこう・・・
 出発前に天気予報や宮古島関連のHPの掲示板等で情報収集したところ、今時分の気候だと長袖Tシャツぐらいが丁度良いとのことだった。宿にいる間は荷物を置いておけるが、3日目のチェックアウト後の行動次第では、荷物を持ち歩かなければならないので、なるべく荷物は少なくしたい。というわけで、いくらこちらが寒くても、ぶ厚いコートは避けたいところ。結局、重ね着作戦(?)でTシャツ+パーカー+ウインドブレーカーを着ていくことにした。

 飛行機は8時55分発のANA123便沖縄行き。自宅から羽田は電車では何度も乗換えなくてはならないので、地元の駅発の羽田行きバスに乗り込む。8時には空港に着いた。
 まずは自動発券機でチケットの発券とチェックインをする。10時間超の海外に行く場合は絶対に通路側を希望するが、沖縄までは3時間弱なので窓側にしてみた。ついでに2階席に座ったこともないので、2階席の翼の前あたりを指定した。(翼の脇だと視界が遮られるので)
果てしない雪原のような雲

 当たり前だが、雨が降っていても雲の上に出てしまえば晴天である。とにかく雲がぶ厚く広がっているので、果てしない雪原のようだった。それはテレビ等で見る南極の景色に似ているような気がした。

 徐々に高度が下がり、雲を抜けると海が見えた。風が荒く、白波がたっている。日が射さないので、海の色は鈍い色をしているが、ところどころエメラルドグリーンのリーフも見え、「沖縄だあ!」という実感がわいてきた。
 充実度100%な那覇空港
 11時40分、定刻どおり那覇空港着。
 那覇空港は4階建ての非常に充実した空港である。宮古行きの飛行機は13時30分発なので、待ち時間が2時間弱あることになるが、時間を持て余すどころか、もっと探検したいくらいである。

 まずは重たい荷物をロッカー(200円)に預け、4階のレストラン街へ。悩んだ末に、「天龍」という沖縄料理のお店に入り、沖縄そば(578円)を食べた。沖縄そばというのは、そばとはいってもそば粉のそばではない。小麦粉、かんすい等が原料なので、太いラーメンというのが一番近いかもしれない。スープはかつお節ととんこつの合わせ出汁が基本らしい。これにかまぼこだとか豚の三枚肉の煮付けなどが乗っている。島によって麺や出汁の特徴が違うらしく、宮古島では「宮古そば」、石垣島では「八重山そば」というらしい。
 土産物店が連なる2階に下りる前に、展望スペースから空港の外をながめた。滑走路の向こうには青い海が見える。こちらは雨はふっておらず、時々雲間から日が射している。そして少し蒸し暑く、Tシャツ1枚で充分な気温である。

 2階には土産物店が何店舗もあり、ここだけで離島の特産品まで買えてしまう。おそろしく充実した空港なので、ぐるぐる見物しているだけで、あっという間に時間がたってしまう。
海の見える那覇空港

 13時を回ったところで、同じく2階の出発ロビーへと向かう。セキュリティ・チェックを済ませてゲートへと向かう途中、なんとDFS(免税品店)が! 沖縄は国内でありながら、免税ショッピングができるのである。ただし、沖縄県外に出発する時のみ利用できるので、今は見物(?)のみにとどめる。そろそろ無くなりかけているパウダーが安く買えるわ〜♪となんだか得した気分になる。

 が、宮古行きの飛行機にトラブルがあったらしく、出発が30分ほど遅れ、14時発となった。宮古島へは14時50分に到着した。

 宮古に到着
 少ない乗客がばらばらと散ると、空港内はあっという間に閑散としてしまう。
 3日間の滞在中、お土産が何も買えなかったときの最後の頼みは空港である。そんなわけで、宮古島に到着した私がまずしたことは、宮古空港の探検であった。

 宮古空港は、私が利用したことのある地方空港の中では一番立派だった。赤瓦の3階建ての建物で、土産物店がこれまた充実しているのだ。これならばすべて空港で調達できそうだ・・・と去りかけた私の目の端に、レジの脇に山と積まれたものがひっかかった。
宮古島名物! 巨大なうずまきパン

 そのブツとは、「うずまきパン」。ガイドブック等で宮古島名物(?)として紹介されているもので、形状は巨大なカステラ巻きといったところである。やわらかいパンにあまーいクリーム(生クリームというより、ざらざらしたアイシングという感じ)を塗ったくって巻いてある。
 「好きになっちゃった沖縄の離島」(双葉社)によると、お隣の伊良部島の「まるそうパン」製のものが一番人気らしい。近づいて見てみると、まさに「まるそうパン」のうずまきサンドではないか! これはぜひとも食してみなくては! とひとつ購入。136円也。それにしても、予想外の大きさである。
 トイレを済ませると、1階出口わきの観光案内所のカウンターで、無料のタウンガイド誌「宮古島タウンガイド」と「んみゃーち宮古島・ガイドブック」を入手。特に「んみゃーち宮古島」の方には割引チケットがついているので、宮古島を訪れた際はぜひ入手すべし!(「んみゃーち」とは宮古島の方言で「いらっしゃい」の意味)

 空港の出口を出ると、どんよりとした曇り空と強風が私を出迎えてくれた。うーん、残念だけど仕方がない。
 そして目の前にはタクシーの長ーい客待ちの列ができている。ちなみに、客は誰も並んでいない。大きなお世話かもしれないが、今日中に最後尾まで仕事ができる(=お客を乗せる)のか心配になるくらいタクシーが大量に待機している。

 私は実はタクシーに1人で乗るのが苦手である。何が苦手かというと、運転手さんとの会話が苦手なのである。運転手さんにもいろんなタイプの人がいるので、よく話す人もいればあまり話さない人もいる。1人でしゃべってる人もいれば、人のことばっかり聞く人もいる。苦手なタイプ(押しの強い話し方をする人)の運転手さんに当たった場合、1メーターくらいの距離ならどうということはないのだが、長距離になると結構つらい。

 いくらたくさんのタクシーが並んでいても、自分で「これ」と選ぶわけにはいかないし、乗ってみなければ海とも山とも知れないわけで、ちょっと緊張しつつ一番前に停まっていた「丸多タクシー〇号車」と大きく書かれたタクシーに乗り込んだ。
 運転手のSさんは宮古の人なのだが、以前は東京で働いていたとのこと。宿がある池間島(宮古島とは橋でつながっている)までの約30分の道中、東京の話だとか、9月に宮古を襲った大きな台風の話などしたのだが、なかなかいい人そうだったので、3日目の相談をしてみた。1、2日目は池間島におこもり状態になるので、3日目のチェックアウト(10時)後から14時くらいまでのあいだに、島内観光をしたいと思っていたのだ。宮古島は海のきれいなところで、景勝地がいくつもあるのだ。

 が、観光地にありがちな「島内1周バスツアー」の類はないので、レンタカーで自力でまわるかタクシーを利用するしかない。今回の旅行では、飛行機代がタダということもあり、1万円程度であればなんとかこの観光代として捻出できる。ガイドブックによると、初乗り料金は390円だが、30分いくら、といった時間制料金の設定もあるらしかったが、1万円を出るようであれば、時間と訪問箇所を絞るしかないかな・・・と考えていた。

 Sさんと交渉の結果、9時半に宿まで迎えに来てくれて、島内をぐるっと回った後に14時頃空港着という内容で、ぽっきり1万円ということにしてくれた。よその観光地からくらべるとおそろしく安い。予算内でめいっぱい動けそうで非常にありがたかった。

 宿に到着
 15時半すぎに、今回のお宿「ラサ・コスミカ ツーリストホーム」に到着。非常に個性的なペンションである。(「ラサ・コスミカ」については、「旅のお宿」コーナーにて紹介しています。こちらも併せてご覧下さい)
 2階の客室に案内され、どさっと荷物をベッドの上に放り出すと、まずはバルコニーに面したガラスドアを開けた。目の前には鈍い青色の海が広がり、その果てには鉛色の水平線がぼんやりとかすんで見えた。空にはどんよりと重い雲がたれこめ、時々雲間からくっきりとした陽光が海に差し込む。「こういうの、『天使の梯子』っていうんだっけ?」などと考えながら、しばらく海を眺めていた。

 しかし台風と季節風の影響で、風が非常に強く、海も時化ている。どどーん、どどーんという力強い波音を聞きながら、荷解きをして、机の上の注意事項にひと通り目を通した。
天使の梯子

ビーチへ降りる足元注意!な階段(?)   少し落ち着いたところで、宿の庭先からビーチに降りてみることにした。宿の崖の下には「アラシッス・ヒダ」という小さなビーチがあるのだ。

 足元に注意しながら、ごつごつした岩場を降りビーチに出る。「晴れてたらビーチでひなたぼっこしたかったのにな」とちょっと哀しい気分で、しばらく強風に吹かれつつ荒れた海を眺めていた。
 これまたガイドブックによると、浜辺に落ちている貝殻やガラスの破片などを拾い集めることを「ビーチ・コーミング」というのだそうな。子供の頃、海に行けば、早朝に貝殻拾いなどをしたものだが、こんなオシャレ(?)な呼び名があるとは知らなかった。

 夕刻のアラシッス・ヒダには、貝殻の破片とゴミが少々。よーく探せばきれいな巻貝もあるのだが、そういうものは大抵ヤドカリ君の住居となっているので、連れ帰るわけにはいかない。
 携帯電話で翌日の宮古島の干潮時間を調べると、翌朝6時すぎが干潮らしかったので、明朝再度貝殻拾いにチャレンジすることにした。(余談だが、宮古島および池間島での携帯電話(私はau)の電波状態は良好だった)
アラシッス・ヒダ(池間島)

 17時過ぎに部屋に戻ったが、夕食の時間(18時半)まですることがないので、目覚ましをかけてベッドにもぐりこんだ。天井のスピーカーからはヒーリング系音楽が流れ、お香の香りがほんのりと漂っている。窓の外からはかすかに波音が聞こえ、うつらうつらと幸せな気分で休んだ。
 18時半に1階のダイニングに下りると、すでに3組のお客さんが3つのテーブルに座っていた。残りはカウンターとテーブルがひとつずつだったので、テーブルの方に陣取った。「ラサ・コスミカ」の料理は、オーガニック・ベジタリアン料理なので、当たり前だが野菜がたっぷり。
 この日のメニューは、とき卵とモッツァレラチーズのスープ、野菜(アスパラ、ブロッコリー、カリフラワー等)のクリーム煮、カレー風味のポテトサラダ、玄米ご飯。有機栽培された野菜自体もおいしいし、味付けもおいしいしで、かなり量があったが残さず食べた。
 常日頃は炭水化物がメインの食事になりがちなので、野菜だけでお腹一杯になったことは、今までなかったような気がする。
ラサ・コスミカの夕食

 19時半ごろ部屋に戻り、シャワーを使う。備え付けのシャンプーは石けんシャンプーだったのだが、全然ぎしぎしした感じがしなかったので、これなら自宅でも使いたいと思った。以前、肌と環境のためにいいと聞いて、石けんシャンプーを使ってみたのだが、あまりにも髪がギシギシゴワゴワになってしまったので、早々に挫折してしまった経験があるのだ。

 シャワー後、部屋でガイドブックや、空港でもらったタウンガイドなどを読んでいたのだが、眠くなってきたので22時には就寝。波音を聞きながら、あっという間に眠りについてしまった。