British Hills 訪問記
その2

 車を降りた私たちの目の前には、イギリスの田舎の村の風景が広がっていた。ゆるくカーブを描く小道に沿って、様々な様式の建物(宿泊棟)が配置されている。もっとエセっぽいものを想像していた私たちは、この予想を裏切るブリティッシュヒルズの雰囲気に大興奮。
マナーハウス
マナーハウス
 コッツウォルズなどイギリスの「本物」の田舎に行ったことがあるので、つい比較してしまうのだが、「本物」ではないけれど「かなり頑張ってますで賞」をあげたいくらいである。

 とりあえず手荷物だけを持って、レセプションへ向かった。敷地がかなり広いので一瞬とまどったが、レセプションはマナーハウス(英国荘園領主の館を模した、ブリティッシュヒルズで一番大きい建物)にあるので、一度わかってしまえば間違えようもないのだった。このマナーハウスは城のように鎮座ましましていたが、宿泊棟とくらべるとちょっと歴史がまだ足りないなーというか、「うーん形だけ?」という印象が否めなかった。
 しかし。建物内へ足を1歩踏み入れたならば、これはこれでかなり頑張ってるのである。(・・・私がエラソーに「褒めてつかわす」と言う立場ではないんだが) 
 そこには重厚な空間が広がっており、「作りました」という違和感があまり感じられない。そんな雰囲気に圧倒されながら、Hちゃんと私はチェックインのためにレセプションのカウンターに向かった。
 先にも書いたが、ここブリティッシュヒルズは神田外語グループが経営する国際研修センターである。つまり、本来はここは単なるホテルではなく、テーマパークでもなく、英語や英国文化を学ぶための研修施設である。故に、スタッフはほとんど英国人・・・ブリティッシュヒルズに1歩足を踏み入れた時から、ここはイギリスなのである! つまり英語を話せ!ということなのだ。

 Kから私が海外旅行好きだということを聞いていたHちゃんは、私が英語ぺらぺらだと勘違いしていた。なので、カウンターの向こうに立つ金髪のお姉さんを見るなり、私の手をつかんで離さない。が、単語英語で旅行を乗り切る私だって、正直なところびびりまくりである。
マナーハウス内
マナーハウスの内部
 そこにちょうど日本人スタッフが出てきた。ほっとしたのもつかのま、彼女の口からは英語が・・・。Hちゃん、「え?え?」という感じで硬直している。
「応対は英語にしますか、それとも日本語で?、って聞いてるよー」と私が言うと、Hちゃんは「もちろん日本語で!」ときっぱり言い切ったので、スタッフのお姉さんは「もちろん、ですか」と苦笑していた。
チョーサー
我々が泊まった「チョーサー」
 カウンターで部屋の鍵や食事のチケットなどを受け取り、指定された宿泊棟Chaucer(チョーサー)へと向かう。Chaucerはハーフティンバー様式の建物で、黒光りする柱や梁がほどよいアンティークな雰囲気を醸し出していた。
 
 部屋は2階のスタンダード・スイート(スタンダードな客室がすでにスイートなのであって、わざわざ高級な部屋を予約したわけではない。高級シティホテルのスイート・ルームを想像しないように!)2部屋である。錠前、という感じのクラシックな鍵を木の扉の鍵穴に差し込むが、どうもうまく開かない。
 ガチャガチャと四苦八苦してなんとか開いた扉の向こうには、これまたクラシックな空間が・・・。
 短い廊下の脇には、広めのバスルームがあり、そこにはなんと「猫足バス」が! 最初っから度肝を抜かれる。アンティーク家具と天井の梁がいい感じのベッドルーム。ベッドの上には、バスローブとモルトン・ブラウン(英国製)のアメニティ。そして一応スイートなので、ベッドルームとは別にある居間(というほど広くない。狭い空間にソファとテレビが別置してあるだけ)には、湯沸しポットとブルックボンドの紅茶・・・素晴らしい! 
チョーサー(スタンダードスイート室内)
アンティークな室内
備え付けのマント
マント!!
 これでパブでの夕食と、メインダイニングでの朝食、そしてオマケとして1人10ポンド分の金券(パブやギフトショップで、1ポンド=100円換算で使える)つきで、なんと12,000円である。素晴らしい!

 鼻息荒く部屋の中を物色していた私は、何気なくクローゼットを開けてみた。すると。そこには、なぜかフードつきの黒いマント(コートではなく、あくまでもマント)が! 「うおー、ハリポタじゃー!」私たちの興奮は最高潮に達した。
 というのも、ここにいる4名はすべてハリポタの大ファンだったのである。わざわざこんな山奥のイギリスにやってきたのも、6月公開のハリポタ第3弾「アズカバンの囚人」の前哨戦(?)として、ハリポタっぽいというかイギリスっぽい雰囲気を味わいながらハリポタ話で盛り上がろう!という目的が大きかったからなのである。

 東京はすでに桜も散り、日によっては26〜28度とかなり気温があがっていたが、まだ根雪の残り、風の冷たいここブリティッシュヒルズでは、このマントの存在はありがたいものだった。
荷物を車から運び終えると、私たちはさっそくマントを羽織り、外へと探検に繰り出すことにした。が、階段わきの扉が客室の扉とはちょっと違う。興味津々でおそるおそる開けてみると、そこは何と談話室! 暖炉にソファー! うーん素敵だ・・・といちいち興奮しつつ外に出る。

 建物の位置関係を確認しつつ、まずはメインの建物であるマナーハウスへ。この日は客が少なかったのか、滅多に人とはすれ違わなかったが、それでも老若男女の皆が皆黒いマントを羽織っていて、なんとも微笑ましい(?)雰囲気である。
チョーサー(談話室)
談話室
 そう、ここはホグワーツ! そして我々は皆、ホグワーツ生なのだ〜! 途中で通り過ぎたギフトショップのことは、勝手に「ホグズミード」と命名。我々全員、すっかりその気になって記念撮影をしまくるのであった。
 
 マナーハウスの重厚な階段を上ると、2階にはLibraryとクイーンズ・ルーム、キングズ・ルームという2つの立派な部屋がある。この日は結婚式があったということで、この2部屋は新郎新婦の控え室として使われていたそうだ。こんな場所で行う結婚式・・・かなりいい雰囲気なのではないかと思われる。

 しかし、何はともかく、このLibraryがまたいい雰囲気! 電球のやわらかいオレンジの光が灯る空間に、壁一面の本棚が・・・そこにはきれいなマーブル紙や皮表紙の本がぎっしり並び、その書棚には梯子がかかっていたり・・・。とにかく鼻息荒く興奮気味な私。私は職業柄、図書館という場所を偏愛しているので、「ここに住まわせてくれ〜」と言いたいくらいだったのだ。
マナーハウス内Library
ライブラリー
マナーハウス内クイーンズルーム
クィーンズルーム