British Hills 訪問記
その3

夕暮れのブリティッシュヒルズ  あっちこっちを興奮気味にのぞきつつ、そしてそこかしこで記念撮影をしているうちに、すっかり日は暮れ、夕食の時間が近づいていた。

 夕食は7時からパブで食べることになっていた。強い風にマントの裾をひるがえしつつ歩いていると、目の前をたたたたたーっと横切るものが! なんとそれは「イタチ」であった! うおー山の中―!
 パブの広い店内も、これまた梁がわたり、大きな暖炉のある素敵な雰囲気である。そしてもちろんカウンターの中には金髪のお兄ちゃんが・・・。
 食事のクーポンをもらっていたので、にゅっと突き出すと、どこでも好きなところに座れと言われたので、一番奥の席へ陣取った。しかしこの日は本当に客が少ないらしく、私たちのほかには、カウンター席に座って飲んでいる金髪にーちゃんのみ。(きっと彼はブリティッシュヒルズのスタッフであろう) もっとにぎやかだったらもっと楽しい雰囲気なんだろうなーと思った。
 チェックインの際に、パブで使える金券をもらっていたので、「じゃあここで飲み物を」ということになったのだが、またもやカウンターに向かうのはHちゃんと私の2人である。
 Hちゃんが期待に満ちた目で私を見ている。・・・どうも成り行き上、どうも私が注文しなくてはならないらしい。
 が、しつこいようだが、私は単語英語で個人旅行をも乗り切った女である。スムーズな注文なぞできるわけがない。
パブ店内
パブの暖炉
 私:「ジンジャーエール?」(=ジンジャーエールはありますか? のつもり)
 店員:「Yes」(=あるよ)
 私:「スリー」(=じゃあ3つちょうだい のつもり)
 店員:「OK」(=あいよ)
 私:「アーンド・・・ワン ビアー」(=で、あとはビールひとつちょうだい のつもり)
 店員:「Which?」(=どのビールにする?)
 私:「Hちゃん、どのビールにする?」と数種類のビールの前で2人して悩む
 カウンター席の客:「British Hills is Good!」(=ブリティッシュ・ヒルズっていうビールはおいしいよ)
 私:「ブリティッシュヒルズっていうビールがあるんだー、あ、これだね」
 Hちゃん:「じゃあ私、それにします」
 私:「(British Hillsのコックを指差しつつ)、ディス ワン プリーズ」(=じゃあ、これひとつね のつもり)

 ・・・とまあ、こんな感じで、無事3杯のジンジャーエールと1杯のビールをゲットし、テーブルで乾杯! 色々話して盛り上がっているところに、まず前菜登場。スモークサーモンとカナッペ。前菜とはいえ、結構な量である。イギリス料理はあまりおいしくないという定評(?)があるが、ここの料理はどうも日本人コックがつくっているのか、日本人の口にちょうどいい味加減でおいしい。でもって、やがてコーンスープとパンがやってきて、すでにこの辺で腹八分目といった具合に。

 そんなところへ、こんどはパスタ(アツアツのペスカトーレ)が運ばれてきた。もうお腹一杯である。「もう終わりだよね」というKに、「いやー、きっとまだメインが出てくるよ。だってパブなのにフィッシュ&チップス系の料理が出てきてないじゃん」と言う私。しかし私自身、もうお腹一杯だったので、心の底では「もうコーヒー持ってきて」と願っていたのだった・・・

 案の定、メインが「お待たせっ!」という感じでやってきた。ステーキ&チップス&ビーンズが大皿にどどんと盛られている。これぞパブ! もう苦しいのだが、味はいいし、残したらもったいないし悪いので、ひーひー言いながら肉やイモをつつく。そしてデザートとコーヒーでトドメをさされた・・・。
ライトアップされたマナーハウス  くるしーくるしーと唸りつつ、パブを出た私たちの目の前に、いきなりディズニーランドのエレクトリカルパレード風味にライトアップされた夜のブリティッシュヒルズの風景が・・・。
 「なんか違う・・・」と呟きつつ何気なく空を見上げると、今度は満天の星空! 「うわーすごいねー」と感動しながら、Chaucerへ戻ってみると、電気のついているのは2階は我々の部屋と談話室のみ、そして1階は1部屋のみ。とにかくしーーーんとしている。
 冷えてきたので、部屋のヒーターを入れ、一部屋に集まってお茶など飲みつつ、この日の珍道中な話やハリポタ話に花を咲かせているうち、あっという間に時計の針は12時を回っていた。
 あんなにお腹一杯だったのに、ちょっと小腹がすいてきたので、Hちゃんが持参したこだわりのお菓子をいただくことにした。それはハリポタに登場するイギリスの伝統的なお菓子であるミンスパイ、ロックケーキ、糖蜜パイである。Hちゃんは、今日この日のために、ネットで探し出した菓子店からこれらの菓子を取り寄せていたのだった。いずれも粉っぽく、ぼそぼそした感じで、そして甘い。「素朴なお菓子だよね」と言いつつ、粉をのどにつまらせて、皆紅茶をおかわりしたのだった・・・