British Hills 訪問記
その1

 4月9〜11日に石垣島と竹富島へ出かけた私は、旅の余韻にひたりつつも「あー、かったるーい・・・早く週末にならないかなー」と、月曜日からヨレヨレと出勤していた。
 そんな私の元へ、水曜日の深夜にメールが届いた。
 いわく「今週末に福島のブリティッシュヒルズってところに泊まりに行くんだよー。1人突然キャンセルが出たんで、まあもう諦めてるんだけど、とりあえず誘ってみたー」。
 私はこのメールを読んで思わず唸った。体力的・費用的な問題もあるので、通常であれば即断っているところである。が、行先がブリティッシュヒルズ・・・これはどうしたものか・・・。

 ブリティッシュヒルズ(British Hills)とは、神田外語グループが経営する国際研修センターで、福島県の山奥にある。いつごろ何でここの存在を知ったのかは忘れてしまったが、イギリス好きの私にしてみれば、非常に興味津々の施設だったのである。が、何分不便な場所にあることもあり、訪問する機会がなかなか持てなかったのだ。
 メールを開いたディスプレイを前にしばし悩んだのだが、「この機会を逃したら、もう行けないかも・・・」と、数分後には「行きます〜」と返事を送信した私であった・・・。

 16日(金)の晩は、参加メンバーの1人K(もう10年超のつきあい)が衣装を担当した舞台を観に行くことになっており、そこでKと合流して、そのままK宅に泊めてもらった。翌朝10時に今回の旅行の企画担当HちゃんとPちゃんが我々をピックアップ。私はHちゃんとPちゃんとはほぼ初対面に近いので、ちょっと緊張気味にご挨拶。
山女
恨めしそうな顔の山女
 ブリティッシュヒルズまでは、Pちゃんの運転で運んでもらう。途中、何回かサービスエリアで休憩を取りつつ、一路福島へ。那須のサービスエリアでは、どーんと焼き魚の屋台が出ており、恨めしそうな顔をした山女だの岩魚だのが、串刺しになって香ばしい匂いを周囲に漂わせていた。

 ブリティッシュヒルズの最寄インターは白河インターである。HPのアクセスマップによると、ここから約40分の道のりということになっている。インターを出れば、そこはもう東北。東京ではすっかり終わってしまった桜が満開である。
 のどかな風景の中に、突如巨大なダイエーが出現したので、「・・・きっとここが最後のお店だよ」などと冗談半分通り過ぎた私たちだった。(が、冗談ではなかった・・・) ダイエーを過ぎた少し先で、最初の看板発見。「ブリティッシュヒルズ この先22km右折」・・・「22km先」の右折って・・・ある意味すごい表示である。道路の両脇は、延々と田んぼの続くのどかな風景。のどかであるが故に、「私たち、一体どこに向かってるの!?」という不安な空気が車の中に漂いはじめる。

 そんな時、Pちゃんがナビ担当のKに「HPの地図だと一応道がうねうね書いてあるんですけど、ネットで調べた地図だと真っ白なんですよね・・・」とボソッとつぶやいた。真っ白? その空白は一体何を意味するの!? 先行きに不安を覚えつつも、我々を乗せた車は田んぼの中の一本道をひた走る。
 周囲の動くものと言えば、最近都心ではとんと見かけなくなった白い軽トラと鯉のぼりのみ。鯉のぼりに関しては、絶対人口より多いだろうというくらいうじゃうじゃと泳いでいる。「ポールに大中小の3尾」なんてある意味フツーの鯉のぼりなぞないのだ。5尾7尾はあたりまえ、下手すりゃ「縦」ではなく、何かのイベントのように「横」にぞろぞろ泳いでいる。門構えの立派な家にいたっては、家紋入りの大漁旗まではためいてるし・・・
 そのうち人家は姿を消し、ひたすら木、木、木。枯れた森の地面にはいまだ根雪が残っている。目指すブリティッシュヒルズはまだその気配(?)すら感じられない。不安は払拭できないものの、近隣にはゴルフ場がいくつもあるので、それらの行先表示などを参考にしつつ、ずんずんと車は山奥へ進む。やがて、いろは坂のような強烈なうねうね道の峠越え・・・この旅最大の難所(?)であった。シートベルトをしていなかった後部座席チームは、右に左に振り回されてグロッキー・・・ ふきのとう
ふきのとう
 そしてようやく「22km先 右折」の地点へとたどりついた。その入口っぽい雰囲気に、「やっと着いたーーっ!」と誰もが思った(はずだ)。しかし、ここから門までがまた遠いのだった・・・
 やはりイギリスは遠い。たとえパスポートが要らなかろうが、イギリスは遠かった。そう簡単にたどり着ける場所ではなかったのだ・・・しみじみと門を通り過ぎ、駐車場へと向かった。