Des Bains デ・バン (イタリア・リド島) |
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(注)先に「コンチネンタル」(トレヴィソ)をお読みいただくと、より一層(?)お楽しみいただけます。多分。 リド島のホテル「デ・バン」。 映画「ベニスに死す」の舞台となったこのホテルは、旅行パンフレットのホテル・ランクでは、大抵デラックスタイプに分類されているため、本来であれば、私の参加したチープなツアーとは縁がないはずだった。 しかし、当初はベニス本島に2泊の予定だったのが、島内のホテルが手配できなかったという理由で、ベニス初日は近郊のトレヴィソ泊、2日目がリド島泊と予定が変更されてしまった。 予定ランクのホテルが手配できなかったことによるグレード・アップだったのか、あるいは予定変更になったおわび的なグレード・アップだったのかはわからないが、こんな事情で、「デ・バン」に宿泊できることになったのである。 前日のトレヴィソのホテル「コンチネンタル」があまりにも「・・・」だったため、「デ・バン」への期待は過剰なまでに高まっていた。 夕食をベニス本島で済ませ、船でリド島に渡った。 (余談だが、「コンチネンタル」がバスタブつきの部屋でなかった参加者は、このレストランで飲み物1杯をを旅行社負担で頼むことができた。私は大好物の「赤いオレンジジュース」を頼んだのだが、これがまた美味だった! やはり、オレンジジュースは真っ赤に限る!) ツアー客がぞろぞろと各々の部屋へと向かう。 私に割り当てられた部屋はずいぶん奥の方らしく、ベネチアン・グラスの照明がほのかに照らす長い長い廊下を先に進んだ。 開錠に手間取っていると、先にドアを開けたらしいツアーの客の「わあ!」という感嘆の声が聞こえてきた。 期待に満ち満ち、ドアノブに手をかける。 昨日は、ドアを開けた瞬間に絶句した。さて今日は・・・ 「うわー、お姫さまみたい!」 これが私と友達の第一声。 ・・・どこがどう「お姫さま」なのかは突っ込まないでいただきたい(汗)。とにかく、ただこの瞬間、この言葉しか出てこなかったのだ。 ドアからベッドまでの距離の長いこと。広々とした空間は、私の好きな水色と白を基調としたさわやかでやさしい色調で飾られていた。 天蓋つきベッドなんてないし、そういう意味での「豪華さ」ではないのだが、何と表現したらよいのか・・・とにかく「すてき」な部屋だった。 「すごいね」 「さすが、デ・バンだね」 私と友達は感嘆しながら部屋の写真を撮りまくり、その後、ホテル内をちょっと探検してみることにした。 しかし、人気のない夜更けのホテル内を闇雲に歩き回っては、いかにも「不審者」なので、ロビー周辺までにとどめたが。 こんなすてきなホテルなのに、滞在時間はほんのわずかしかなかった。 お風呂に入ったりなんだりで、あっという間に時間は経ち、ベッドに入ったのは1時すぎ。 明朝は6時集合という早出発のため、ホテルで朝食をとることすらできない。 ホテル着も発も真っ暗闇のなかだったため、ホテルの全容や、窓の外の風景すら見ることができなかったのが心残りでならない。 「デ・バン」は私が「すてき」な部屋ににこだわる原点となったホテルである。 どんな部屋かな、と期待しながらドアを開けた瞬間、「わあ」と感嘆するあの気持ち。 たまたま「デ・バン」は高級ホテルだったけれども、でも高級かどうかが問題なのではなく、その尺度は「すてき」かどうかなのだ。 (余談) 早朝にベニスを発った我々ツアー客は、バスで朝食を受け取った。箱の中身は、ラスク2枚、りんご1個と、洋ナシ100%のビンジュースであった。栓抜きの持ち合わせのない我々全員が、このジュースを飲めなかったことは言うまでもない・・・(やはり朝食はイギリスに限る、としみじみ・・・) |
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天井のレリーフ |