ビッグタイムリゾート伊計島

(沖縄)





 1990年9月宿泊。
 学生時代。友人と、「夏休みになったら、海に行きたいね」と、最初にあさっていたのは伊豆方面(大島、神津島等)のパンフレットだった。
 が、一枚紛れ込んでいた、与論島格安ツアーのパンフレットに目は釘付け!
 真っ白いリゾートホテル、真っ青な南の海・・・
 そして、伊豆にほんのすこし旅行費を上乗せすればOKなくらいの、お安い旅費。
 伊豆はこの時点で敗北し、私と友人の心は、すっかり与論島に飛んでいた。
 
 が、この格安ツアーには、格安ツアーなりの理由がちゃーんとあったのだ。
 行きは船(それも客室なしの大部屋ごろ寝。2泊だか3泊だか、結構時間もかかる)、帰りが飛行機なのであった。
 若さが売り物(?)の学生としては、「船でも何でも」と考えていたのだが、お互いの両親に「船はやめなさい!」と断固反対され、泣く泣くこのツアーはあきらめることになったのであった。

 しかし、いまさら伊豆には戻れない!(伊豆の皆さんごめんなさい・・・)
 心はすでに南の島。
 そうだ、沖縄へ行こう! 夏休みの残りの日々は、働いて旅費を作るのだ!
 そんなこんなで、結局、沖縄2泊3日のフリーツアーに申し込むことになった。(もちろん予算オーバーである)

 このツアーは、ホテルはランク指定だったので、出発間際になるまで、どのホテルになるのかわからなかった。
 郵送で届いた旅程案内をドキドキしながら見てみると、「ビッグタイムリゾート伊計島」というホテル名が目に入ってきた。
「・・・島?」
 はて、と頭を悩ませながら、沖縄のガイドブックをめくる。
 通常、ホテルが固まって建っているのは、「ウエスト・コースト」(?)のあたりだが、そこらへんではないようだ。
 索引で調べてみると・・・「ウエスト・コースト」とは島の反対側、海中道路でつながった「伊計島」にあるホテルであった。
 街からは遠く離れているが、きっと海はきれいだろう・・・期待を胸に、9月某日、びょーんと沖縄へ飛び立った・・・(ちなみに、これが飛行機初体験だった・・・)

 沖縄へ着いてみれば、「ウエスト・コースト」方面のホテルの皆さまは、大型送迎バスに連れて行かれ、われわれふたりは、全く方向が違うためか、一台のタクシーに連れて行かれた。
 乗り込むや否や、タクシーの運ちゃんがくるりと振り向く。
「今からホテルに行っても、まだチェックインできませんよ。せっかくだから、沖縄観光しませんか」
 すでに旅費自体が予算オーバーの我々にしてみれば、観光貸切タクシーなんて高くて無理だ、と顔にでっかく書いて運転手を見返した。
 運転手、しばしの沈黙の後、「・・・5000円でいいよ」。
 5000円ならばなんとかなりそうだ。
 そこで商談成立、行き先は運ちゃんのお任せでお願いすることになった。
 運ちゃんは、ひめゆりの塔、玉泉洞、ハブセンター、グラスボート、琉球ガラス村などを回ってくれ、そして最後にホテルまで連れて行ってくれたのであった。

 さて・・・アロハシャツを着たホテルマンたちが、元気に出迎えてくれたが、ピークの過ぎた9月のホテルは、少し閑散としていた。
 台湾からの団体客が多いようで、ホテル内は中国語が飛び交っているのであった。
 ホテル周囲の海は岩場に囲まれているため、海水浴を楽しむには、少し離れた小さな人工ビーチに行くか、あるいは公共海水浴場まで送迎を頼むか・・・のふたつの選択肢があった。
 我々は、公共海水浴場へ行ったのだが・・・本当に透き通った美しい海だった。首まで浸かっても、足先が見えるのだから・・・

 ホテルの周囲は、遊歩道になっていたため、日差しの弱くなった夕刻、散策に出た。
 ちょこちょことヤドカリが歩くのを発見し、大喜びで行く先を目で追っていたが、その先の看板を見て、途端に無言になってしまった。
「ハブに注意!」
 ・・・そうだ、ここは沖縄であったか・・・。いきなり早足で、スタスタ歩き出した我々であった。
 
 夜になり、私はベランダに出た。
 周囲にはなにもないため、漆黒の闇に浮かぶ白い月が、ひどく明るく見えた。
 そして・・・月明かりが、真っ黒い海の上で、ゆらゆらと静かに揺れていた。
 ざざーん、ざざーん、という波の音だけが耳に届き、私は友達が寝てしまった後も、いつまでも外を見ていたのだった・・・
 
 沖縄で記憶に残っているのは、この夜の月明かりと、伊計島の海の美しさ、そしてタクシーの運ちゃんが連れて行ってくれた場所のみ・・・食べたものやら、部屋のことはほとんど覚えていない(汗)
 ほとんどホテル紹介にはなっていないが、どうぞご勘弁・・・


ビッグタイム・リゾート伊計島
部屋からの風景。赤い屋根は別棟のレストラン。 室内。露出規制中(?)につき、代打バナナ登場。
・・・なんでバナナかって?
 別に身体全体が隠れるだけの長さがあれば、何でも良かったのです。
特に意味はありません(汗)